投稿

6月, 2018の投稿を表示しています

救急タダvs救急車タダ

残りわずかのオーストラリアンライフに涙しているおがです。 忘れないうちに感じたこと投稿しておきたいと思います。 本題に入る前に、オーストラリアの医療制度について軽く触れておきたいと思います。 日本との一番大きな違いは General Practitioner (=かかりつけ医、以下 GP )が中心となっている体制だということです。 日本だと公立・私立にかかわらず処置自体は国民健康保険で 3 割負担、入院費用等が病院によって異なる、という形態です。その病院はというと、 1 次医療として地域の開業医があって、 2 次医療として地域の中規模病院があって、 3 次医療として大学病院などの専門的な特定機能病院が存在します。数時間単位の待ち時間と初診料を気にしなければ、紹介状がなくても基本的にはどの病院にも行くことができますよね。逆にどこへでも行けるから、この症状では何科に行けばいいのかわからないという患者さんの悩みにつながるのかもしれません。 オーストラリアでは大きく、一次医療としての GP と、高次医療としての公立・私立病院という分類になります。公立病院では医療費は公立保険のおかげで、オーストラリア人ならばなんと無料になります。ただし GP からの紹介状がなければ公立病院で高次医療を受けることができません。また、たとえ紹介状があったとしても重症で緊急度の高い患者が優先的に割り込まれるため、症状の落ち着いている慢性疾患は数ヶ月単位で待つというのも多く見られます。このため経済的に余裕がある人は私立病院で高次医療を受け、公立保険でカバーされない差額分を自己負担するということもざらにあります。   ただし一つだけ GP にも寄らずに直接公立の高次医療機関を受診し無料で医療を受けられるかもしれない道があります。 それが今回お話する “ Emergency Department ”救急部(以下 ED )です。 あれ、あいつ救急回ってないのにーと思うかもしれませんが、呼吸器内科で慌ただしかったという僕の愚痴覚えていますか? ( 笑 ) ED では入院が必要そうな症例については、入院前に必ず担当内科コンサルトを入れます。逆の立場からすると、内科の先生方は、軽症でない用件で突然 ED に呼び出されるという

ANU 呼吸器・睡眠内科

イメージ
こんにちは! 最近このブログでうるさい !? おがです。 オーストラリア先発組の同期が帰ってしまって寂しいの。許して。 というのも派遣生のほとんどの人が 4-5 月の二ヶ月で、 5-6 月派遣のオーストラリア後半組を始め 6 月にもなってまだ海外で実習している人は数えるほどしかいないのです。(医学部最終学年にもなってまったくね、帰国したら医師・初期研修先の就活、ドウシマショウカ。) ともかくそんなことを言っていたら今を楽しめないので、せっかくのこの海外派遣の機会、何事も全力で走り抜けて行きますよ!(あまりの脳筋っぷりに相方にドン引きされているのは気のせいだね) さて、そんなランナーの僕だって医学生らしく少しは真面目な話ができることを見せて差し上げましょう ( 笑 ) ということで最初の一ヶ月で回った「呼吸器・睡眠内科」について今日はお話します。   呼吸器内科部門 呼吸器内科は医科歯科大学付属病院にもある通り、肺炎、肺癌、 COPD (急性増悪)、胸水貯留、等の肺の病気をこちらでもメジャーに扱います。一方で 5/5 の Rheumatology 紹介で Takuna が書いているように、やはり人種的多様性のある国では特に遺伝性疾患について疫学が大きく異なります。ここではキャンベラ病院で最も多く重篤な症例、 Cystic Fibrosis (肺嚢胞線維症)という病気について少し取り上げたいと思います。(どうしても医学用語を使うので、わからない人は睡眠内科部門まで読み飛ばしてください) 肺嚢胞線維症 とは腺細胞に機能異常がある常染色体劣性遺伝病です。もちろん分泌系の機能はすべて大なり小なり影響されますが、最も致命的なのは呼吸器系のクリアランス低下に伴う感染症です。出生時から発症し感染が起きれば予後不良( 30-40 代までに感染症で亡くなる人が多いとのこと)、かつ、原因遺伝子がすでに特定されているため、こちらでは新生児スクリーニングの検査項目の一つにも含まれているそうです。 実際にグループで担当だった患者さんたちは、例えばビタミン剤 A 、 D 、 E 、 K を内服していたり(これらは脂溶性ビタミンですよね、膵臓のリパーゼ分泌低下等で脂質の消化吸収不良があるため補充する)、肺

ANU 老年内科

こんにちは、オーストラリア後半組の片割れです。 後半組のブログは相方が頑張ってくれていたので微笑ましく見ていたんですが、最近並々ならぬ圧力を感じるのでそろそろ重い筆を持ち上げようかと思います。 さて、今回は僕が先月回っていた老年内科を紹介します。 老年内科といえば、毎年とても人気の高い科としてオーストラリアに留学する医科歯科生の中では有名です。去年は4人中3人も回っていたんですが、今年は恐らく病院側の都合でなかなかこちら側の希望が通らず、たまたま僕だけが運良く回れることになりました。 老年内科には病棟が3つあり、 急性期病棟 亜急性期病棟 GAPU(Geriatric Assessment and Plan Unit) の3つがあります。 僕が主に実習を行なっていたのはGAPUというところで、老年内科に入院が決まった患者さんのファーストタッチを行い、急性期病棟、亜急性期病棟、もしくは他科の病棟に振り分ける役割をしています。基本的に患者さんがGAPUにいるのは48時間以内なので入れ替わりが多く、それぞれの専門科に縛られることなく多彩な疾患を経験することができました。 具体的なスケジュールとしては、 8:30〜10:30  Ward Round いわゆる回診のことです。先生が毎日患者さんの話を聞き、また身体診察や検査結果から病状を把握します。頭のてっぺんから足のつま先まで丁寧に身体診察をしている点が印象的でした。また他の科と比べて先生が患者さんに対して話すスピードがゆっくりなので、リスニングの練習にもなりました。回診が終わると、チームの先生たちと院内のカフェテリアにコーヒーを買いに行きます。 10:30〜12:00  病棟業務の見学 回診後にコーヒーを飲んで一息ついた後は、上級医の先生の病棟業務(経過の確認や患者さんの家族への病状説明、包交などの病棟処置など)を見学していました。あまりにデスクワークしかない時などは、亜急性期病棟の回診に参加することもありました。 13:00〜16:00  各種レクチャー、手技・検査の見学や実践 これは曜日によってばらばらで、Grand Roundといった内科共通のレクチャーのような規模の大きいものから(無料の昼ごはんが出ます)、老年内科の先生たちが持ち回りで発表を行うイベントに参加したり、また

豪に入っては豪に従え

イメージ
こんにちは! おがです。 前回はオーストラリアのなんくるないさー精神についてお伝えしましたね! 今回はこちらに来てのもう一つの第一印象について。   それはズバリ…   隠れ肥満大国だということです。 (先生方から患者さんまで、みんなわりとオープンに自認している話です)   僕と同じくらいの身長 (170cm) で平均的に 75-80kg くらいあります。 これ BMI にすると 26-28 程度。日本で言えば肥満域です。 (ちなみに薬の投与量を決めるのに外来で体重を頻繁に測るから知っているだけです。人の体重を見透かす能力を僕は持ち合わせていません笑)   日本でもまああるじゃんって思うかもしれませんが、特徴的なのは男女ともに体格がいいということ。意外にも身長はさほど変わりません。   ただ驚くのはまだ早い、こんな程度じゃ肥満大国の名が廃れます笑。 なにせ 100kg オーバーの人が多いんだわ。 150kg 前後も週に 3 人くらい呼吸器病棟に運び込まれます。   僕が見た MAX は 216kg の中年女性でした。 胴回りが大きすぎて MRI の機器に入らず検査不可になりました。おそろしやー   呼吸器・睡眠内科(実習については次回詳しく書きます)で、肺塞栓症や睡眠時無呼吸症候群を治療していることを差し置いても、さすがに多すぎるね。 だから既往歴聴取のときには、個別に必ず高血圧、糖尿病(ここまでは日本でも確認するね)+心血管イベントや脳卒中まで確認します。 (あと皮膚癌も。日差しが強いからやっぱり多いみたい。)   しかしここはやはりオーストラリア。 みんなあっけらかんとしていて良くも悪くも深刻に捉えていません。   日本だと、ほらきたとばかりに食事や運動について教育指導して、効果が薄かったら薬剤治療、みたいな流れだよね。 医師も患者も真面目で神経質だから向き合って取り組むし、その成果あっての世界に誇る長寿大国であるとは思います。     郷に入っては郷に従え。     ストレスフリーで自

ハーバードで何をしていたんだ !?

イメージ
私たちはHarvard Medical SchoolのInternational students向けのプログラム(Exchange Clerkship Program)を利用してアメリカで臨床実習をしてきました。 2ヶ月間、外国人医学生として何をして、何を学んだのか簡単にお伝えしたいと思います。 簡単にハーバードの実習をまとめると... ========================= ・Harvard Medical School (HMS) の外国人向けのプログラムでHMSの学生と同じように病院実習ができる。 ・主に4つのHMS関連病院で実習が可能。 (HMSと3つの病院 BWH/BIDMC/BCHはLongwood Medical Areaという一つの場所に集まっている)  - Massachusetts General Hospital (MGH: 歴史ある一般病院で外科が特に有名)  - Brigham and Women's Hospital (BWH: 比較的専門性が高い病院)  - Beth Israel Deaconess Medical Center (BIDMC: 一般~専門病院の中間くらい)  - Boston Children's Hostpital (BCH: 小児専門病院) ・HMSの臨床実習コースはたくさんあり、そのうちの一部が外国人の医学生も希望できる。大まかに分けると内科(入院/コンサルト)、外科、特殊な専門外来/病棟が選べる。 ========================= Longwood Medical Area 私の2ヶ月の生活範囲はここでほぼカバーされます 実際に医学生がアメリカのシステムの中で何ができるかというと... ========================= 特にHMSについて ・どの診療科でも以下のメンバーからなるチームを組む。  - Attending: 指導医  - Fellow: 専門領域にフォーカスしたトレーニングを受ける医師  - Resident/Intern: 基礎領域のトレーニングを受ける医師  - Student: 学生 ・診療科によるも