GPを訪ねて8000km

こんにちは。ちょっと日が空いてしまいましたね。
この間におがは相方と慌てて荷造りしオーストラリアと涙のお別れを経て日本に帰ってきましたと。
ちょっと投稿間に合わなかったね、許して()海外派遣は無事に終わってしまいましたが、最後にオーストラリアで一番見たかったGeneral PractitionerGP)についてお話します。
なおこれは先生方にお願いをして、その御厚意によりGPの診療所の一つであるOchre Medical Centre Garranに見学に行く機会を頂いたものです。ご協力頂いた先生方、ANU Medical Schoolの事務の方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。



前回もちょっと触れたけれども、復習がてら軽く(詳しくはこの一つ前の投稿を見てね)。
オーストラリアではプライマリーケアと高次医療が完全に分業しています。医療費はオーストラリアの市民権を持つ人が公立病院で受ける治療ならば全て無料です。ただし公立病院にかかる前には必ずGPの診察を受け紹介状を書いてもらわなければなりません。

一言でまとめると、何か医療的に困ったとき、
すごくヤバいなら救急車。
そうじゃないならとりあえずGPに。

逆に言えばGPはあらゆる疾患の初期対応を引き受けます。
 
僕が見学させてもらった日には実際、年齢は上が93歳から下は1ヶ月の赤ちゃん、疾患で言えば高血圧・糖尿病・肥満から風邪・妊婦健診・精神的な問題まで。日本ならば最初から小児科や精神科の専門医が診るようなことでも、初期対応はすべてGPにお任せです。

その地域のプライマリーケアを文字通り一手に引き受けるGPでした。
(ただし一人で、ではないよ。例えばOchreでは10室ほどの診療室があり、10人のGPが各々の患者さんを対応していました。)
 

日本の医療界では専門家であることが強く重要視される傾向にあり、広く浅くのプライマリーケアというのはあまりウケが良くないように感じます。しかしオーストラリアでは社会構造的にGPが基盤になっていることもあり、立派な専門診療科のひとつとして認められていて、学生の中でも志望する人は多いように見えました。

 
一方でよく指摘のある、GP制度の待ち時間長いのはどうするんじゃ問題。
具体的には、GPに会う予約を取って、GPに会って症状を説明して、その上でもしも高次医療機関にかかる必要がある場合には紹介してもらわないと、ってなると高次医療にいつになったら掛かれるのだということ。

たしかにその通りなのですが、それは日本でも言えるのでは?
日本でも現実的には大学病院に直接行くという人は救急以外では稀で、実際には地域の中核病院から大学病院に紹介されて、という流れかと思います。流れとしては大きくは変わらないし、日本の大学病院もかなり待たされるように見えます。
とすると、むしろ予後の悪い疾患(一部の進行癌など)が見つかった場合に、紹介先の高次医療機関での待機リストの先頭に割り込んで優先的に診てもらえる点は良いのではとも思ったり。たしかに病状の落ち着いている人が一週間程度予定よりも多く待つことにはなりますが、それは公共の福祉としてご理解をお願いするということを、大学病院の先生方は遅くなったことへお詫びとともに説明していました。このようなスピードのメリハリ感はとても新鮮でした。
 
ただしキャンベラは人口がそこまで多くなく、最初のGPの予約を取る段階が簡単にできるからこのような印象になった可能性は十分にあります。GP制度元祖のイギリスの都市部やシドニー・メルボルン等の大都市圏では事情は異なるかもしれません。

 
 

ここからはもう少し突っ込んだ話をするので、難しい話はいいやという人は最後までスクロールして、おがと愉快な仲間たちの写真でも見て行ってください()

 

プライマリーケアというと起こった病気に対する初期対応はもちろんですが、同時に地域に根付く医療者として、予防医学だとか、高次医療機関から戻ってきた患者さんのフォローというのも大きな仕事になります。

 予防医学に関しては以下のガイドラインを教えてもらいました。とても長いため全部読んでねとは言いませんが()好きな項目一つくらい開いてみてはどうでしょう。簡単に言うと、年齢・性別・生活歴等でどのような人がどれだけのリスク下にあるのか、そのリスクに対してどれだけの頻度で何の項目をフォローするべきか、ということが疾患ごとに載っている辞書みたいなものです。
https://www.racgp.org.au/guidelines/redbook


 
フォローに関しては特に糖尿病や肥満といった生活習慣に伴う慢性疾患に対してどこまで介入するのかということを聞いてみました。僕が付いたGPの先生は、「あなたは定年後どのような人生を送りたい?」と患者さんいつも問いかけているそうです。
どの患者さんへも丁寧に将来的なリスクを説明し、あなたの夢と病院通いどちらの道に進むかは選んでもらう。もちろん中には将来のことは良いから今を謳歌したいという人もいますが、そこは個人の考えを尊重するということです。
一見遠回りに見えて本人の意思を確認するのが一番だと先生は考え、時間をしっかり割いて話を聞いているそうです。生活習慣に関してはどうしても本人の意識が必要になります。強制されても長続きしない。だからこそどのような結論であれ本人が納得して決断を下す、そのためのサポートをするということでした。

 

また個人的な興味として、どのように疾患の幅広さに対応するための勉強をしているのか、聞いてみました。医学は奥深く際限ないものであり勉強し続けなければならないのは当然ですが、現実的なアプローチとして全ての診療科分野において疾患の頻度順に優先順位をつけて、ガイドラインから勉強しているということでした。GPの専門医試験にむけた教材を一部見せていただきながら、その教科書に載っている程度の深さを目安にしているということでした。メモしてある範囲で教材を教えてもらっているので、興味ある人は声かけてください。
 

 

ということで留学志望動機の、GPを見学してその働き方を知るということを無事完了し、スッキリして帰国しましたおがでした。

2ヶ月間お世話になったみなさま、本当にありがとうございました!
 

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