Otolaryngology at Boston Children's Hospital

こんにちは!ハーバード医学校関連病院での実習を終えたRyoです。
5月25日をもって2つ目のクールが終了し、こちらでの実習がすべて終了しました。

現在は達成感と解放感を感じるとともに、終わってしまったという虚無感もあります。
これからハーバード医学校関連病院派遣生は各々旅行観光をしたのち、日本に帰国予定です。
私はボストンで週末を過ごした後にニューヨークとフロリダに行く予定です。
体調管理と安全に気をつけて全力で楽しみたいと思っているところです。

さて、今回の投稿では5月クールに実習した実習内容の紹介と、留学を通して思ったことを述べたいと思います。

5月はBoston Children's HospitalでOtolaryngology(耳鼻咽喉科)を実習しました。

外来の入口

耳鼻咽喉科では毎日種々の手術が行われており、学生は基本的に毎日その手術を見学します。
鼓膜チューブ留置術や咽頭口蓋扁桃摘除術といった時間の短い手術から、経鼻的副鼻腔手術や人工内耳植え込み術、鼓室形成術といった比較的時間のかかる手術まで多彩な手術が行われていました。

内視鏡下や顕微鏡下の手術が多いため、先月の泌尿器科の実習よりは学生が術野に入ることは少なかったです。
また解剖がとても複雑なうえに術野も非常に狭いため、どこにいるのか、何をしているのかを理解するのにかなりの時間を要し、実習の始めの方はもやもや続きでした。
4週目になってようやく鼻腔と副鼻腔の位置関係や鼓膜の解剖について少し理解できるようになり、手術時のもやもやは少なくなりました(とはいえ今でも正直よくわからないです、めちゃむずです)。

手術以外には外来見学やコンサルト見学をすることもできました。
コンサルトでは耳鼻咽喉科スタットコールを受けることもあり、その際は喉頭鏡や挿管器具を持って病棟を全力で走ります。
救急科での気道閉塞や手術室・ICUでの挿管困難症例に対しては耳鼻咽喉科の先生が責任を持って処置にあたるようで、緊迫した雰囲気になることも多かったですが、卒なく挿管するのはさすが気道のプロだと何度も感動していました。

1日の流れは、
6:30 回診
7:30 手術
16:30 回診
17:00 解散
という感じでした。
回診はカルテ回診がメインで、リストの中で確認しておきたい患者さんはグループで直接回診に行くという外科らしいシンプルなものでした。
また週に3回程度他科との合同カンファレンスやレクチャーがあり、気道問題について議論したり、画像について勉強したり、レジデント・フェロー対象の症例をもとにしたレクチャーが行われたりと、様々なカンファレンス、レクチャーに参加することができました。


この診療科は、学生が行うべきことは特に設定していないため、受け持ち患者やプレゼンテーションなどはなく、ひたすら見学がメインでした。
「問診とかしてみたいんですけど」と上の先生に言ってみても、「この科では学生が問診とかしたことないからなー」と返されてしまい、学生の居場所のなさを感じてしまうことも何度もありました。
内科系の診療科での実習であれば、学生に役割を与えられ、チームの一員として迎え入れてくれますが、本診療科では実際の診療にほとんど学生が関わることはできませんでした。
そのため、耳鼻咽喉科・頭頸部外科に興味のある学生、手術を見ているのが好きな学生でない限りは退屈に感じてしまう実習であったと思います。

というネガティブなことを書いてしまいましたが、初期研修で必修となっていない耳鼻咽喉科に4週間どっぷり浸かれたのは勉強になりましたし、貴重な経験となったことに疑いはありません。
総じて言えることは、問診してプレゼンテーションしてフィードバックもらってレクチャーにたくさん出るみたいな、いわゆる想像される米国の医学生の実習とは少し質の異なるものであったということです。
外科系の診療科は、科によっては学生の役割がないところもあるため、診療科の希望を提出する際は留意するべき点であるのかもしれません。


さて、今回の留学を通して思ったことは、「日本帰ってからもっと頑張ろう」です。

こちらの国の医師の世界はとんでもなくcompetitiveです。
そもそも医学部に入ることも学業成績だけでなく、ボランティア活動や研究活動の実績が必要なことが多いですし、入学してからは医師国家試験で高得点を取るために必死で勉強し、よりよい研修先に行けるために実習では上の先生から良い評価を得ることに必死にならなくてはなりません。

日本では医学部に入ることは確かに大変なことであり、多くの方が塾や予備校に通い詰めて学業成績を伸ばし、受験を勝ち抜いてなんとか医師の卵になります。
ですが、医学部に入学してからは、「みんなで勉強してみんなで頑張ろう」という雰囲気の中で授業や試験を受け、実習を行います。
国家試験の勉強でもよく、「まわりと同じことをしていれば落ちない」と言われる通り、日本の医学生の多くは同級生との馴れ合い的雰囲気の中で過ごしているように感じてしまいます。
もちろん同級生と協力し合いながら学生時代を過ごすことは1人で6年間を過ごすよりはるかに大きなメリットがあることに疑いはなく、日本の医学生の過ごし方や医学部の教育体制を否定するつもりは全くありません。

ですが、こちらの医師になる上での環境を少し見ることができた私としては、純粋にもっと頑張ろうという思いが出てきました。
まわりと同じことはやる、その上でもっと自分にできることはないかということを常に考えてそれを行動に移すようにする、そういった心構えで今後の医学部生活・研修医生活を過ごしていきたいと思うようになりました。


海外臨床実習を経験した同級生には各々思ったこと・考えたことがあると思いますし、またそれは各々によって違うことと思います。
学生中に2か月間もボストンで実習ができたことは様々なことを考える機会となりました。
こちらに来られて良かったと毎日思いますし、サポートしていただいている大学関係者には感謝しかありません。

人生のどのポイントでも「6年生のあの時期に海外で臨床実習ができて良かったな」と思えるように、今後もより一層何事にも力を入れて頑張ろうと思います。


追記です。
日曜日に派遣生同期たちとハーフマラソンに出場しました。
ともに2か月間頑張った最高の仲間です。
派遣生同士の仲が深まるのもこの留学の非常に良いところだと実感する8週間でした。

レース前の元気な私たち


ではでは~


Ryo


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